THE KINGDOM POST

まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。

説明会でよくある「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」って一体何だ?

会社説明会で「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」というアピールをしているところは結構多い。また「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」でぐぐってみると面白いぐらい多くの採用サイトがヒットする。しかし「責任ある仕事」って何だろうか?なぜそれがアピールポイントになってるんだろうか?と色々と疑問が湧いてくる。

責任ある仕事とは?

そもそもこれらの文脈における「責任ある仕事」とはなんだろう。

 

辞書を引いてみると「責任」とは「自分のしたことの結果について責めを負うこと」とある。実際、仕事で大きなミスを犯すと、場合によっては解雇や減俸、降格、左遷といった形で責任を明らかにすることもあるだろう。また、小さなミスでも上司からの叱責や始末書の執筆等があり得る。すると、どんな仕事にも多かれ少なかれ責任は存在すると考えられる。責任ある仕事なんてもともと負っているわけで「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」と特別に言う必要はないはずだ。

 

そうすると「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」とは、責任のあるなしではなく、責任の重さについての言及と考えるのが妥当だろう。重い責任の仕事というのは想像に容易い。例えば、社運をかけたビックプロジェクトや重要な取引案件がそれに当たるだろう。もちろん、こういった仕事は、若いうちのぺーぺーに任せてもらえるわけがない。一方、「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」における「責任ある仕事」とは、上記よりかは社会に対する影響は小さく、責任の重さが中度な仕事のことになるだろう。

 

「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」とぐぐってみると、様々な企業の採用サイトが出てきて、仕事内容なども紹介されている。以下のような例が出てきた。

・工作機械の主要部品製作にあたっての手配から工程管理、出荷

・製品発表会において会社のブースを取り仕切る。

・住宅建設の施工管理 (施工計画、予算管理、工程管理、職人の管理、品質管理、安全管理)

これらはある程度責任がある上に、自分で仕事の方法や進め方などが裁量可能な仕事と言える。つまり「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」における「責任ある仕事」とは、責任の重さが中度かつ自分の裁量で取り仕切る仕事と考えるのが妥当だろう。

 

ただ、ここでこの文脈における「責任ある仕事」を明確に定義することにあまり意味はない。それは企業の規模や業種によって異なるだろうし、企業内の部門によってもまちまちだからだ。だからこそ、説明会において質問などの形で「責任ある仕事」とは何なのかをはっきりさせ、業務の具体的内容を把握する必要がある。ブラック企業の見分け方の一つとして、業務内容を具体的に説明しない企業には要注意だそうだ (参考:ブラック企業の見分け方 | ブラック企業対策プロジェクト) 。もし「責任ある仕事ができる」ことばかりアピールして、具体的な内容を示さない企業がいれば要注意だ。

 

なぜそれがアピールポイントになってるんだろうか?

そもそも「責任ある仕事なんか負いたくない。責任が少ない仕事で、お金を稼げるほうがいい」という人も多いはず。では、なぜ企業側はわざわざ「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえる」ことをアピールポイントにしているのか?企業側がどういう狙いで発信しているのかについて推測してみよう。

 

まず考えられるのが、就活生の成長意欲を煽る狙いだ。責任ある仕事を任せてもらい、経験を積み、いろんなスキルを身につけて、成長していけるとアピールすることで、そうした成長意欲のある就活生に食いついてもらいたいのではないだろうか。実際、若いうちから、自分の裁量で仕事をできるというのは魅力的なんだろう。また、「責任ある仕事」と銘打つことで、当社の仕事はいわゆる「やりがいのある仕事」(そもそもやりがいのある仕事って何だ?と思うが、ここでは割愛。)だとアピールしているのかもしれない。

 

就活生というのは、それができるできないは別として、ESや面接で私は入社後こういうことをしたいとアピールすることが定番だ。やたらと夢を語らせる。こういうことを語っていると「責任ある仕事をしたい」という心理状況に陥ってしまう可能性が高い。このような企業側のアピールは、就活生の心理状況と親和性が高いものなのだろう。

 

さらに、こちらが当社の魅力として「責任ある企業を任せてもらえる」というのを挙げているのだから、君たちの志望動機もこれに合わせろと暗に示しているのではないかと思う。そして、入社後どんどん仕事を任せるから文句言うなよという免罪符にでもするのかもしれない(もちろん全ての企業がそうだというわけではないが)。

 

また、もしかすると「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえる」ということは、その仕事を任せられる人物が不足しているという可能性もある。若手を使うだけ使って使い潰すというのは、ブラック企業の一つの特徴だ。そう考えると「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」というのは危険性を含んだ言葉でもある。

 

まとめ

今回は謎のワード「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」に迫ってみた。

 

「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」でぐぐってみると、新入社員へのインタビューを掲載している採用サイトが出てきて「この会社に入社を決めたのは、若手のうちから責任ある仕事を任せてもらえるからです。」なんて言葉があった。しかし、それが決め手になるというのはどうなんだろう。具体的業務内容を明確に調べた上でなら分かるが、ただ企業側の「責任ある仕事を任せてもらえる」というアピールを真に受けて決めたというのでは、博打打ちも甚だしい。

 

やはり「責任ある仕事」とは何なのか、具体的にどのような仕事ができるのかをはっきり確かめる必要があるし、「若いうちから責任ある仕事を任せてもらえます」という言葉に対して魅力を感じるだけでなく、それが含む危険性についても考えるべきだと思う。