THE KINGDOM POST

まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。

不動産取引における広告規制について

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 私たちが住まいを探す場合、まずは新聞折り込みチラシ・新聞広告、ダイレクトメ-ル、物件情報誌、インタ-ネットなど様々な広告媒体から情報を収集し、検討するところから始まる。この情報の内容、表示の方法、必要な事項の項目等がまちまちであった場合、物件選択の判断を誤るなどの被害を受けることになる。このような事態を未然に防止するために、宅建業法などによって不動産広告の法規制がなされている。

1.宅地建物取引業法上の規制

誇大広告等の禁止(第32条)

条文

宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

 規制の対象行為は、宅建業者がその業務に関して不特定多数の者に対して、宅地建物取引に関して広く告げることである。また、顧客を集めるために売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとする、いわゆる「おとり広告」及び実際には存在しない物件等の「虚偽広告」についても本条の適用があるものとされている。

 広告の媒体は、新聞の折込チラシ、配布用のチラシ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ又はインターネットのホームページ等種類を問わない。

 禁止の対象項目は、所在、規模…の法に定める8項目で、内容は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(http://www.mlit.go.jp/common/001030661.pdf)」に示されている。

 

禁止の対象項目

(1) 所在
地番、所在地、位置図等により特定される取引物件の場所。

(2) 規模
取引物件の面積や間取り(個々の物件に限らず、宅地分譲における分譲地全体の広さや区分所有建物の全体の広さ、戸数等も含まれる。)。

(3) 形質
取引物件の形状及び性質(地目、供給施設、排水施設、構造、材料、用途、性能、経過年数等)。

(4) 現在又は将来の利用の制限
取引物件に係る現在又は将来の公法上の制限(都市計画法建築基準法農地法等に基づく制限の設定又は解除等)、私法上の制限(借地権、定期借地権、地上権等の有無及びその内容等)。

(5) 現在又は将来の環境
取引物件に係る現在又は将来の周囲の状況(静寂さ、快適さ、方位等の立地条件等、デパート、コンビニエンスストア、商店街、学校、病院等の状況、道路、公園等の公共施設の整備状況等)。

(6) 現在又は将来の交通その他の利便
業務中心地に出るまでに利用する交通機関の現在又は将来の便利さ(路線名、最寄りの駅、停留所までの所要時間、建設計画等)。

(7) 代金、借賃等の対価の額又はその支払方法
代金、借賃、権利金等の額又はその支払方法(現金一括払い、割賦払い、頭金、支払回数、支払期間等)。

(8) 「代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせん」
金銭の貸借のあっせんの有無又は貸借の条件(融資を受けるための資格、金利、返済回数、金利の計算方式等)。


 「著しく事実に相違する表示」と認められるものとは、上記の各項目について、一般購入者等において広告に書いてあることと事実との相違を知っていれば当然に誘引されないものをいい、単に、事実と当該表示との相違することの度合いが大きいことのみで判断されるものではないこととされている。

 「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」と認められるものとは、上記2の各項目について、宅地建物についての専門的知識や物件に関する実際の情報を有していない一般購入者等を誤認させる程度のものをいうこととする。例えば、「駅まで1㎞の好立地」と広告に表示されているが、直線距離では駅まで1㎞程度であるものの、実際の道のりでは4㎞ある場合、駅までの道のりが1㎞であると一般の購入者を誤認させるような表示であるので、「誇大広告」に該当する。

  違反に対する措置としては、指示処分(宅建業法第65条1項第2号)、1年以内の業務の全部または一部の停止(同2項)。その情状が特に重いとき、又は業務停止処分に違反したときは免許取消処分がなされる(宅建業法第66条第9号)。罰則としては、6ヶ月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれらの併科がなされる(宅建業法第81条)。

広告の開始時期の制限(第33条)

条文

宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第二十九条第一項 又は第二項 の許可、建築基準法 (昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項 の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。 

 都市計画法上の開発行為許可、建築基準法上の建築確認、農地法上の転用許可、宅地造成等規制法上の宅地造成工事の許可等がなければ、広告はしてはならない。  

  第33条の「確認」には、建築基準法第6条第1項後段の規定に基づく確認(以下「変更の確認」という。)も含まれる。建築基準法第6条第1項前段の規定に基づく確認(以下「当初の確認」という。)を受けた後、変更の確認の申請書を建築主事へ提出している期間においても、当初の確認の内容で広告を継続することは差し支えないものとされている。また、当初の確認を受けた後、変更の確認の申請を建築主事へ提出している期間、又は提出を予定している場合においては、変更の確認を受ける予定である旨を表示し、かつ、当初の確認の内容も当該広告にあわせて表示すれば、変更の確認の内容を広告しても差し支えないものとされている。なお、いわゆるセレクトプラン(建築確認を受けたプランと受けていないプランをあわせて示す方式)においても、建築確認を受けていないプランについて変更の確認が必要である旨を表示すれば差し支えない。

 違反に対する措置としては、監督処分として指示処分を受ける(宅建業法第65条第1項2号)。

取引態様の明示(第34条)

条文

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となつて当該売買若しくは交換を成立させるか、代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別(次項において「取引態様の別」という。)を明示しなければならない。

2  宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様の別を明らかにしなければならない。

 広告にて取引態様を明示するとともに、注文を受けた時は重ねて取引態様を明示する必要がある。

 違反に対する措置として、監督処分として、指示処分(宅建業法第65条1項第2号)、1年以内の業務の全部または一部の停止(同2項)。その情状が特に重いとき、又は業務停止処分に違反したときは免許取消処分がなされる(宅建業法第66条第9号)。

2.私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律独禁法)、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)上の規制

 景表法は独禁法の特例法として制定されており、不動産広告については、まず景表法の規制がなされ、景表法で規制することができない場合に、独禁法による規制が必要か否かが検討される。

 違反に対する措置として、公正取引委員会による違反行為の差止等の行政処分として命令がなされ、これに従わないときは刑罰が科される。

3.不正競争防止法

 業者間の正常な競争の確保が目的である。規制される虚偽表示の内容、方法、虚偽の程度において景表法よりも狭い。

 違反に対する措置として、行為の差止、損賠賠償の他、刑罰も課される。景表法等に違反する行為が不正競争防止法にも違反するときは、同法によっても差止を受け、刑法を科されることになる。

4.不動産の表示に関する公正競争規約  

 当該規約は、不動産業界が自主的に定める、不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づき公正取引委員会の認定を受けた自主規制基準である。

 規約は適正な不動産広告を推進するために、①広告表示の開始時期の制限、②一定事項の表示の義務付け、③表示基準、④不当表示の禁止等を定める。  

 

条文

①(広告表示の開始時期の制限)
第5条 事業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、宅建業法第33条に規定する許可等の処分があった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の内容又は取引条件その他取引に関する広告表示をしてはならない。

 

②(必要な表示事項)
第8条 事業者は、規則で定める表示媒体を用いて物件の表示をするときは、物件の種別ごとに、次に掲げる事項について、規則で定めるところにより、見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明りょうに表示しなければならない。
(1)広告主に関する事項
(2)物件の所在地、規模、形質その他の内容に関する事項
(3)物件の価格その他の取引条件に関する事項
(4)物件の交通その他の利便及び環境に関する事項
(5)前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項

 

③(物件の内容・取引条件等に係る表示基準)

第15条 事業者は、次に掲げる事項について表示するときは、規則で定めるところにより表示しなければならない。
(1)取引態様
(2)物件の所在地
(3)交通の利便性
(4)各種施設までの距離又は所要時間
(5)団地の規模
(6)面積
(7)物件の形質
(8)写真・絵図
(9)設備・施設等
(10)生活関連施設
(11)価格・賃料
(12)住宅ローン
(13)その他の取引条件

 

④(不当な二重価格表示)
第20条 事業者は、物件の価格、賃料又は役務の対価について、二重価格表示(実際に販売する価格(以下「実売価格」という。)にこれよりも高い価格(以下「比較対照価格」という。)を併記する等の方法により、実売価格に比較対照価格を付すことをいう。)をする場合において、事実に相違する広告表示又は実際のもの若しくは競争事業者に係るものよりも有利であると誤認されるおそれのある広告表示をしてはならない。

④(おとり広告)
第21条 事業者は、次に掲げる広告表示をしてはならない。
(1)物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
(2)物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
(3)物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示

 

④(不当な比較広告)
第22条 事業者は、比較広告において、次に掲げる広告表示をしてはならない。
(1)実証されていない、又は実証することができない事項を挙げて比較する表示
(2)一般消費者の物件等の選択にとって重要でない事項を重要であるかのように強調して比較するもの及び比較する物件等を恣意的に選び出すなど不公正な基準によって比較する表示
(3)一般消費者に対する具体的な情報ではなく、単に競争事業者又はその物件等を誹謗し又は中傷する表示 

また、「完全・絶対、日本一」等の根拠のはっきりしない抽象的な表現の使用を制限している。

(特定用語の使用基準)
第18条

2 事業者は、次に掲げる用語を用いて表示するときは、それぞれ当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない。この場合において、第4号及び第5号に定める用語については、当該表示内容の根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用することができる。
(1)物件の形質その他の内容又は役務の内容について、「完全」、「完ぺき」、「絶対」、「万全」等、全く欠けるところがないこと又は全く手落ちがないことを意味する用語
(2)物件の形質その他の内容、価格その他の取引条件又は事業者の属性に関する事項について、「日本一」、「日本初」、「業界一」、「超」、「当社だけ」、「他に類を見ない」、「抜群」等、競争事業者の供給するもの又は競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語
(3)物件について、「特選」、「厳選」等、一定の基準により選別されたことを意味する用語
(4)物件の形質その他の内容又は価格その他の取引条件に関する事項について、「最高」、「最高級」、「極」、「特級」等、最上級を意味する用語
(5)物件の価格又は賃料等について、「買得」、「掘出」、「土地値」、「格安」、「投売り」、「破格」、「特安」、「激安」、「バーゲンセール」、「安値」等、著しく安いという印象を与える用語
(6)物件について、「完売」等著しく人気が高く、売行きがよいという印象を与える用語

 違反に対する措置として、不動産公正取引協議会は、違反行為をした事業者に対して、違反行為を排除するために必要な措置を直ちに執ること並びに再び違反行為をしてはならないことを警告し、又は、50万円以下の罰金を課すことができる。事業者は不動産公正取引協議会から警告を受けたときは、これに従わなければならない。不動産公正取引協議会は、警告に従わない事業者に対して500万円以下の違約金を課し、又は消費者庁長官に対して排除命令など必要な措置を講ずるように求めることができる。